踵骨棘(しょうこつきょく)
踵骨棘とは踵(かかと)の部分に生じる骨棘(こつきょく:骨のでっぱり)。症状は、歩行時、起立時の踵部の痛みで中年の女性に多くみられる。踵の部分に腫れや熱感や発赤を生じることほとんどない。
【原因】主に足底腱膜の過度の牽引、繰り返しの衝撃、足のアーチの低下、靴の不適切な選択などが原因。これらが長期間続くと、かかとの骨にトゲ状の突起が形成される。
【対処法】足底に負担がかからないようにインソールを使用したり、ストレッチや運動で足底腱膜の柔軟性を高めたりすることで、症状を緩和することができる。また、症状が強い場合は、抗炎症剤や痛み止めを処方したり、ステロイド注射を行うこともある。
足底腱膜付着部炎(そくていけんまく ふちゃくぶえん)
足底腱膜と踵骨が接合する部分に炎症が起こり、痛みが生じる疾患。
【原因】足底腱膜とかかとの骨が付着する部位(付着部)には、強い牽引力(引っ張る力)とともに、着地時の 荷重による衝撃(圧迫力)の両方が加わることで、過大な負荷が集中する。 そのため長時間の立ち仕事や歩行、体重増加、靴の不適合、スポーツ(ランニングやジャンプなど)に よる使いすぎが主な原因と考えられる。
【対処法】安静にして足裏の負担を軽減すること、そしてストレッチやマッサージで足の柔軟性を高めることが重要。他に、靴の見直しやインソールの使用、必要であれば消炎鎮痛剤の服用やステロイド注射などの治療も検討される。
踵部脂肪体萎縮(しょうぶしぼうたい いしゅく)
踵(かかと)にある脂肪組織が加齢や過度な使用、体重増加などで薄くなり、衝撃吸収機能が低下することで痛みを引き起こす状態。踵部脂肪褥症候群とも呼ばれ、かかとの痛みを訴える原因の一つとして考えられています。
【原因】加齢、過度の使用、体重増加などが挙げられる。これらの要因により、踵の脂肪組織が薄くなり、衝撃吸収機能が低下することが原因とされている。
【対処法】安静にし、アイシングや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用することで痛みや炎症を軽減させる。また、クッション性の高い靴や足のアーチをサポートするインソールを使用することで、踵部への負担を軽減できる。
浅腓骨神経炎トラップメント(せんひこつしんけいえん トラップメント)
浅腓骨神経が圧迫されて神経障害を起こす状態。症状はふくらはぎの外側から足背にかけてしびれや痛み、重症化すると下垂足(足首が上げにくい)になることがある。
【原因】主に膝外側の腓骨頭部での圧迫によって起こる。これは、仰向けでの長時間安静、ギプス固定、腫瘍や骨折などの外傷、足関節の捻挫などが原因。また、長時間の正座や足を組む癖も、腓骨神経を圧迫する原因となる。
【対処法】症状が軽度であれば、安静と適切な靴選び、物理療法などが効果的。重度な場合は、手術で神経を解放することが検討される。
アキレス腱周囲炎(アキレスけん しゅういえん)
アキレス腱やその周囲の組織に炎症が起こった状態を指す。アキレス腱炎はアキレス腱自体に炎症が起こっているのに対し、アキレス腱周囲炎は、アキレス腱を覆うパラテノンと呼ばれる組織に炎症が起こっている場合を指す。
【原因】主にアキレス腱の使いすぎによるもの。スポーツの過度な運動や、長時間の立ち仕事、不適切な靴などが原因として挙げられる。また、偏平足などの足部の構造異常、ウォーミングアップ不足なども影響することがある。
【対処法】基本的には保存療法となります。安静と炎症を抑えることが重要で、症状が軽度であれば、運動強度を調整しながら治療を進める。ヒールアップした靴を履くことでアキレス腱への負荷を軽減できる。アイシングやストレッチ、テーピングなども効果的。
アキレス腱付着部滑液包炎(アキレスけんふちゃくぶ かつえきほうのう)
アキレス腱の踵骨(かかとの骨)との付着部にある滑液包が炎症を起こす病気。症状としては、かかとの後方部分の痛み、腫れ、熱感、圧痛などが挙げられる。
【原因】主に靴による圧迫や摩擦刺激、過度の運動などが挙げられる。また、足の構造的な問題や、加齢による変化なども原因として考えられる。
【対処法】炎症を抑えるために安静と冷却が重要。また、靴のヒール部分が滑液包に触れないように、ヒールリフトや足底板を使用したり、かかとを覆わない靴を履くことも有効。
踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)
シーバー病ともいわれ、成長期の子供に多いスポーツ障害で、かかとの骨端部(踵骨骨端核)に炎症が起こる病気。10歳前後の男児に多く見られ、運動後の痛みや腫れが主な症状。
【原因】成長期の踵への過剰な負担が原因。 子どもの骨は未発達で、とくに踵の骨には骨端線の部分にアキレス腱と足底腱膜という強固な組織が付着しており、とても大きな力がかかりやすいため。
【対処法】保存的治療が中心。痛みや炎症があるときは、患部を安静にし、冷やす。また、インソールなどを使い、かかとへの負担を減らすことも大切。激しい運動は避け、アキレス腱やふくらはぎのストレッチを入念におこなう。
パンプパンプ
ハグルンド病の仲間であり、アキレス腱の踵骨付着部(踵の骨)が靴の圧迫で繰り返し刺激され、炎症や滑液包の肥厚によってコブが形成される状態を指す。踵部の軟部組織の隆起が特徴。押したり、つまんだりしてみると骨性ほどかたくないことも多い。
【原因】主に靴のかかと部分による圧迫や摩擦刺激が原因で起こる。具体的には、靴のヒールカウンターが足のかかとに合わない、あるいは過度な衝撃や摩擦が繰り返されることで、かかとの骨の膨隆部とアキレス腱滑液包の間に炎症が起こり、腫れや痛みを生じる。
【対処法】主に痛みの軽減と靴との摩擦を避ける対策が中心。具体的には、ヒールウエッジの利用、パッドの装着、靴の調整などが考えられる。
ハグルンド変形(ハグルンド へんけい)
かかとの骨が突出することで、靴との摩擦により痛みや炎症を引き起こす病気。主な症状としては、かかとの後ろの骨が膨らみ、靴との摩擦によって痛みが起こることが挙げられる。
【原因】踵骨(かかと骨)の後方部分が肥大して、アキレス腱を圧迫することで発生する。主な原因は、靴のかかと部分(ヒールカウンター)が足に合わないことや、踵骨の形状、足のアーチ、内反足などが挙げられる。また、過度な運動や衝撃、年齢による変化なども影響する場合がある。
【対処法】主に痛みの軽減と靴との摩擦を避ける対策が中心。具体的には、ヒールウエッジの利用、パッドの装着、靴の調整などが考えられる。
脛骨神経踵骨枝エントラップメント(けいこつしんけい しょうこつし エントラップメント)
踵の裏側や足底のしびれ、痛み、灼熱感、冷感など、足根管症候群と似た症状が現れる。歩行時に痛みが増強し、場合によっては夜間痛を伴うことがある。また、踵の内側を押すと痛みが伝わる圧痛部位があることも特徴。
【原因】主に足根管内で脛骨神経が圧迫されること。具体的には、外傷(捻挫、骨折など)、足首の変形、ガングリオン、静脈瘤、脂肪腫、腫瘍、また、扁平足、足に合わない靴、組織の癒着などが考えられる。
【対処法】保存的治療では、鎮痛剤や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用したり、足底板で圧を分散させたり、神経の牽引を軽減するためのヒールウェッジなどを装着する。また、後脛骨筋を強化する運動も効果的。手術は、保存的治療で症状が改善しない場合に考慮される。
※エントラップメント:神経や血管などの組織が、周囲の組織によって圧迫され、損傷または炎症を引き起こす状態を指す。

ということで、今回は足部のトラブルについて記事にさせていただきました。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。
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