もくじ
解剖学的背景

踵骨棘は、踵骨の下部に形成される骨の突起で、足底腱膜やアキレス腱が踵骨に強い牽引力をかけ続けることで発生します。この牽引力により、踵骨に慢性的な負担が加わり、骨の再生過程でカルシウムが沈着し(骨化)、棘状の突起が形成されます。
足底腱膜炎が悪化することにより、踵骨棘の形成が進む場合が多いです。
踵骨棘の形成要因

1. 足底腱膜の繰り返しの牽引力
足底腱膜が踵骨に付着している部分に慢性的な牽引力がかかることで、骨の反応性が高まりカルシウムが沈着し、棘状の突起が形成されます。これは足底腱膜炎とも密接に関連しています。
2. 足のアーチの異常
- 扁平足では足底腱膜に過度な緊張がかかり、踵骨に負担が集中します。
- ハイアーチでは足底への衝撃吸収が不十分となり、踵骨への負荷が増大します。
3. 加齢による影響
加齢による骨代謝の変化や軟部組織の柔軟性低下が、踵骨棘の形成リスクを高めます。特に骨密度が低下している場合は、棘が形成されやすくなります。
4. 長時間の立位や歩行
立ち仕事や歩行などの活動が多い場合、踵骨に繰り返し負荷がかかり、組織へのストレスが蓄積されます。
5. 過体重
体重が増えると足底全体への負担が増加し、踵骨への圧力が強まり棘の形成を促進します。
6. 靴の不適合
クッション性が低く、足底腱膜をサポートしない靴を使用することで、踵骨への衝撃が増加します。
7. 炎症性プロセス
踵骨棘は、腱膜や靭帯の炎症による修復過程で骨組織が過剰に成長する反応として現れることがあります。
これらの要因が組み合わさることで踵骨棘のリスクが増加します。予防には適切な靴やインソールの使用、足のケア、体重管理が重要です。さらに痛みがある場合は整形外科医に相談することをお勧めします。
靴・インソールでの対処法

靴の選定
踵骨棘の管理には、足底腱膜炎同様に足底にかかる負荷を分散させる靴が重要です。
- ヒールカウンターの強化: かかと部分がしっかりサポートされることで、骨格が安定し、足底腱膜及び踵骨棘のストレス緩和につながります。
- 適切なミッドソールの硬さ:柔らかすぎないミッドソールは足底腱膜を支え、足の安定性を向上させます。結果、踵骨棘の負担軽減につながります。
- ローリングソール: 歩行時の足の屈曲を助け、足底腱膜への負担の軽減と、踵からの衝撃を和らげることにより、踵骨棘の痛み軽減につながる可能性があります。

広い、緩い、脱ぎ履きしやすい靴は、踵骨棘を悪化させます。
インソールの使用
インソールは、足底腱膜への負荷を効率的に分散するための効果的なツールです。
- 既成インソール :一般市販されているものでも、アーチサポートとクッション性が高い製品は有用です。
- カスタムメイドインソール: 足型に基づいて作成されるオーダーメイドのインソールは、最大の効果を発揮します。特に内側縦アーチと踵部分のクッション性を高める設計が望まれます。
- ポルスター調整: 骨棘のある場所のインソール部分をくり抜き、またはクッション素材に変えることにより、踵骨棘の負担軽減につがなります。
踵骨棘まとめ
踵骨棘は基本的に完治が難しい疾患です。そのため、日ごろのケアがとても重要になります。足裏が痛いからといって、脱ぎ履きしやすい靴(例えばクロックスのような)を履いていると、足裏の負担はさらに増してしまいます。また病院等で痛み止めを処方されたとしても、一時的に痛みを感じなっているだけで、根本的解決にはなっていません。
まずは足にフィットした靴選びと、土踏まずのバランスを考慮したインソールが、踵骨棘を緩和させる上で非常に重要になります。まずは足に合った靴選びを心がけましょう。
靴屋さん的見解というささいな話

ここからは独自の見解になりますので、お気軽に読んでね。
踵骨棘で来店される方のほとんどの方は、病院で診察をして、レントゲンをとったら、棘があるといわれて…とお話を伺うことが多いです。さすがに棘になっていると言われると、びっくりしますよね…、それ以上に、足裏の痛みが悪化している場合が多いので、いてもたってもいられずという感じの方が、医師に紹介されてくるか、自分で調べて来店される方が多い印象です。
来店時にあきらかにビッコをひいて、歩いてくる方もいらっしゃるので、つらそうだな…と感じますが、ほとんどがクロックスのような、脱ぎ履きしやすい靴を履いているので、余計痛みが増している感がいなめません。
運動靴のようなクッション性の高いモデルで、しっかりサポートしてあげるだけで、踵骨棘の痛みは、かなり緩和される場合が多いです。ビッコひいて歩いてきた方が、普通に歩行されて、帰っていかれる場合も少なくありません。
ただ、多く拝見するのは、指定靴がある場合(安全靴など)や、革靴の場合で、そのような靴は、負担軽減が限定されてしまうので、インソールでどうにか負担軽減できるものを考えていくことになります。
骨棘の痛みが強い場合は、その箇所のインソール部分をくり抜いたり、クッション材に変えたりする調整をおこなう事も多くあります。ここまでくると自己で調整することは難しくなるかもしれませんね。
骨棘は基本的になくならないので、痛みがなくなってきたからと言って、安易な靴を履くと、間違いなく再発しますので、お気をつけください。
ということで、今回は踵骨棘について記事にさせていただきました。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。
足と靴の知識を深めることは、日々の生活に直結する重要な要素です。皆さまに役立つ情報をお届けできるよう、今後も現場での経験と、専門的な知識をもとに記事を投稿してまいります。
引き続き、足と靴の健康を守るための情報を発信していきますので、ぜひチェックしてください。
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